世界のバー業界には「ジャパニーズスタイル」と呼ばれる敬意のこもった言葉があります。所作の静けさ、道具の手入れ、そして氷——中でも氷塊から手彫りする丸氷やダイヤモンドカットは、日本のバーが世界に示した独自の到達点です。源流は戦前から続く銀座のバー文化にあります。禁酒法時代の米国から逃れてきた技術も吸収しつつ、日本のバーテンダーたちは「一杯を完璧に作る」職人の道を深化させました。冷蔵庫時代になっても氷屋の純氷を使い続け、注文を受けてから氷を削る——効率とは正反対のこの美学は、高度成長期の銀座・京都・大阪のカウンターで磨かれ、2000年代以降、海外のトップバーテンダーたちが来日して持ち帰る「逆輸入の技術」となりました。ロンドンやニューヨークの名店が日本式の丸氷を導入し、ハードシェイクが海を渡る。ウイスキーの氷が芸術になった場所を一つ挙げるなら、それは銀座のカウンターなのです。
銀座の氷 — 日本のバーが氷を芸術にするまで
手彫りの丸氷、鏡のようなステア——日本のバー文化は、世界が「ジャパニーズバーテンディング」と呼ぶ様式を育てました。