2010年1月25日、スコットランドの国民詩人を祝うバーンズ・ナイトに合わせ、英国で小さなブラインドテイスティングが開かれました。英タイムズ紙の企画で、スコッチ数銘柄に「創業わずか数年の台湾の新参者」を紛れ込ませた目隠し対決——結果は番狂わせでした。首位に立ったのは台湾のカバラン。2006年に蒸溜を始めたばかりの蒸溜所が、本場の銘酒を抑えたのです。会場がスコットランドだったことも話題性に拍車をかけ、この一件は「カバラン・ショック」として世界の業界紙を駆け巡りました。勝因は亜熱帯の気候です。台湾の高温は熟成を数倍の速度で進め、若い原酒に十年級の風格を与えていました。「ウイスキーは冷涼な土地の酒」「熟成は長いほど良い」という二つの常識が同時に揺らいだ夜——以後、インド、オーストラリア、北欧と新興産地の台頭が続き、ウイスキーの世界地図は五大産地の外へと描き広げられていきます。