日本の飲食店では、頼まなくても氷入りの水が出てきます。しかしこれは世界の標準ではありません。氷に対する感覚は、気候・水事情・食文化によって驚くほど違います。

01 氷をたっぷり使う文化

アメリカでは、ソフトドリンクにグラスいっぱいの氷が入るのが一般的です。安価で豊富な氷の供給と、冷たさを好む嗜好が背景にあります。バーでも氷は惜しみなく使われ、飲み物は「冷たいもの」という前提が強い。日本のハイボール文化も、この系譜に近い位置にあります。

02 氷を控える文化

ヨーロッパの多くの地域では、飲み物に大量の氷を入れる習慣は薄く、水も常温で供されることが珍しくありません。冷やしすぎると味が分からなくなるという考え方や、そもそも夏でも涼しい気候が背景にあります。ウイスキーをストレートやトゥワイスアップで飲む文化とも、無関係ではないでしょう。

03 日本の独自性

日本は、バーにおける氷の技術が突出して発達した国です。手削りの丸氷、透明度への強いこだわり、氷を主役に据えたメニュー。かき氷という氷の食文化を持ち、氷室の歴史を持つ土地柄が、この感性を育てたとも言われます。氷を「単なる冷却材」ではなく「素材」として扱う視点は、日本のバー文化の際立った特徴です。

04 文化の違いを楽しむ

旅先で出される飲み物の氷の量に、その土地の気候と価値観が表れています。氷が多ければ多いなりに、少なければ少ないなりに、その理由がある。氷という小さな要素からも、文化の違いは十分に読み取れるのです。

05 自分の流儀を持つ

文化に優劣はなく、あるのは違いだけです。氷を入れるか入れないか、大きくするか砕くか——どれも正解であり、その土地なりの合理があります。大切なのは、他人の流儀を知ったうえで、自分の流儀を選び取ること。世界の多様さを知るほど、自分がなぜその飲み方を選ぶのかが、はっきり言葉にできるようになります。