氷はほぼ水だけでできています。原料が一種類しかない以上、どの水で凍らせるかは無視できない変数です。ただし、その影響は多くの人が思うのとは少し違うところに出ます。

01 ミネラルは凍結時に押し出される

水が凍るとき、結晶格子は水分子だけを規則正しく取り込もうとします。溶けていたミネラルや空気は、その格子から締め出される。行き場を失った成分は、まだ凍っていない水のほうへ押し出され、最後に凍る部分に濃縮されます。だから硬水ほど、中心や末端が白く濁りやすい。ミネラルが多いほど「押し出される荷物」が多いというわけです。

02 味の観点 — 干渉するかどうか

ミネラル分の多い水はそれ自体に風味があります。氷が溶けてウイスキーに加わったとき、その風味が繊細な香りと干渉することがある。日本の水道水や国内のミネラルウォーターの多くは軟水で、ウイスキーの加水にも適するとされてきました。スコットランドの仕込み水も多くが軟水であることを考えると、軟水とウイスキーの相性には一定の必然があります。

03 結論 — 身近な軟水を丁寧に

透明度と味の両面で扱いやすいのは、軟水の浄水です。硬水は濁りやすく味も主張するため、氷には向きません。ただし、特別な水を探し回る必要はない。水質の違いより、凍らせ方(方向凍結)の影響のほうが圧倒的に大きいからです。身近な軟水を、丁寧に凍らせる。これが最も費用対効果の高い選択です。

04 同じ水で作り比べてみる

理屈を読むより、一度自分で比べてみるのが早い。水道水、浄水、市販の軟水、市販の硬水——同じ容器と同じ条件で凍らせ、透明度と溶けたときの味を比べてみてください。差が分かりにくければ、それは水質より凍らせ方の影響が大きいという証拠であり、労力を注ぐべき場所が分かったということでもあります。逆にはっきり差が出るなら、あなたの地域の水は氷づくりにおいて無視できない変数だということになります。実験は一度で十分です。自分の環境における答えが出れば、以後は迷わずその水を使い続けられます。