「カクテルの女王」と称されるマンハッタン。ウイスキーにスイートベルモットとビターズを合わせ、ステアして仕上げる気品の一杯です。オールドファッションドが原初なら、マンハッタンは洗練の到達点。19世紀ニューヨーク生まれのこの名作を、家で仕立てる方法を解説します。
01 ベルモットという相棒
マンハッタンの味を左右するのが、ベルモット(ハーブで香りづけした酒精強化ワイン)です。スイートベルモット(赤・甘口)が標準で、これがカクテルに薬草の複雑さと甘みを与える。ベルモットは開栓後に劣化するワインなので、冷蔵保存して早めに使うのが鉄則——古いベルモットはマンハッタンを台無しにします。ちなみに、ドライベルモット(白・辛口)を使えば「ドライマンハッタン」、両方を半々にすれば「パーフェクトマンハッタン」。ベルモットの選択が、女王の表情を変えるのです。
02 ステアの美学
マンハッタンはシェイクせず、ステア(混ぜる)で作ります。理由は、澄んだ見た目と滑らかな口当たりを保つため——シェイクすると空気が入って濁り、泡立つ。氷を入れたグラスで静かに30回転ほど混ぜ、適度に冷えて薄まったところで濾す。この「混ぜすぎない・薄めすぎない」加減が、家庭での成否を分けます。氷は大きめの良質なものを使い、手早く。ステアという地味な動作に、実はカクテルの技術が凝縮されているのです。マドラーや長いスプーンがあると、ぐっと本格的になります。
03 楽しみ方
マンハッタンは、少し特別な夜のカクテルです。ライウイスキー、スイートベルモット、ビターズ、チェリー——材料を揃えれば、家が上質なバーになる。ベースをライとバーボンで飲み比べ、ベルモットの銘柄を変えて実験する楽しみもあります。カクテルグラスで供せば、見た目の気品も格別。禁酒法以前から愛される女王を、丁寧にステアして仕立てる夜は、家飲みの一つの到達点です。オールドファッションドの次に覚えるべき、古典の第二歩です。