ウイスキーの本場スコットランドの気候は年中冷涼——「夏の一杯」「冬の一杯」という発想は、実は四季の濃い国の特権です。旬の魚や着物の柄のように、季節でウイスキーを替える——日本的な感性でこの酒を編み直す、十二ヶ月の提案です。

01 春 — 花と若葉の季節(3〜5月)

桜の季節に合うのは、華やかで軽やかな系統です。花見の主役はハイボール——白州の森の香りは、屋外の空気の中でこそ完全に開きます。気の利いた提案として、桜餅の香りと重なる響ブロッサムハーモニー(入手できた年は花見の格が上がります)、山崎の華やかさもこの季節の正装です。新緑の5月にはグレンリベットやリンクウッドの「花系スペイサイド」——若葉の匂いの夕方に、花の香りのモルトを常温ストレートで。春は「軽やか・華やか・屋外」の季節です。

02 夏 — 炭酸と煙の季節(6〜8月)

梅雨には意外な提案を——湿った空気には、アイラの煙が合います。雨の日の部屋で飲むラフロイグは、薪ストーブの記憶のような妙な安らぎがある(愛好家に共感者の多い、説明しがたい現象です)。盛夏は文句なしにハイボールの王国——タリスカーの黒胡椒ソーダ、ボウモアの燻香ソーダと、「煙のハイボール」の実験場としても最高の季節。そして熱帯夜の切り札がミストスタイル(クラッシュアイスに注ぐ)——溶けやすさを冷たさに変換する、夏だけの飲み方です。

03 秋 — 樽と果実の季節(9〜11月)

空気が乾き始めたら、シェリー樽の出番です。レーズンと黒糖のグレンドロナック、オレンジとチョコのダルモア——紅葉の色と、グラスの琥珀が同調していく季節。食欲の秋には、焼き芋や栗菓子とバーボン樽系の蜂蜜香(バルヴェニー)という和洋折衷の好相性も発見があります。夜が長くなるほど、飲み方はハイボールからロック、ストレートへと重心を下げていく——秋は「移行の美学」の季節です。