2016年前後から、日本のウイスキー史上例のない蒸溜所建設ラッシュが始まりました。北海道の厚岸(アイラ式への挑戦)、鹿児島の嘉之助(焼酎蔵の転身)、静岡(薪直火という古式)、滋賀の長濱(日本最小級)——先駆者・秩父(2008年)の成功に続けと、地酒蔵、異業種、個人が次々と蒸溜免許を取得し、稼働する蒸溜所の数は数年で数倍に膨れ上がります。背景には世界的な日本ウイスキーの高評価と品薄、そしてクラフトジン・クラフトビールに続く「小さな造り手」の時代精神がありました。玉石混交の懸念も語られましたが、厚岸や嘉之助が国際品評会で受賞を重ね、実力で答えを出しつつあります。多様な風土——亜寒帯の海霧から南国の温暖まで——で熟成される原酒たちは、「日本のウイスキー」の定義を大手二社の美学から、列島全体の実験へと押し広げました。10年後、20年後の名品の多くは、この夜明けの時代に仕込まれた樽から生まれるはずです。
クラフトの夜明け — 2016年からの開業ラッシュ
厚岸、嘉之助、静岡、長濱——2010年代後半、日本各地で小さな蒸溜所が次々と産声を上げました。百年に一度の建設ラッシュです。