1937年、寿屋(現サントリー)は一本のウイスキーを発売します。薩摩切子に着想を得た亀甲模様の四角い瓶——正式名「サントリーウヰスキー12年」は、その形から「角瓶」と呼ばれ、やがてそれが正式名になりました。山崎蒸溜所の開設から14年。初期の「白札」がスモーキーすぎると不評に終わった失敗を糧に、鳥井信治郎が「日本人の繊細な味覚に合う味」へたどり着いた答えがこの一本でした。角瓶は発売から現在まで88年以上、一度も市場から消えることなく売れ続けています。戦争を、高度成長を、ウイスキー冬の時代を、ハイボールブームを——日本の現代史のすべての食卓を、この四角い瓶は通過してきました。2008年の復活劇(角ハイボール)の主役に選ばれたのも、国民的な記憶の器だったからです。日本のウイスキーが「輸入品の模倣」を卒業した記念日を一つ選ぶなら、この瓶が生まれた日をおいて他にありません。
1937年、角瓶誕生 — 国産ウイスキーが自立した日
亀甲模様の四角い瓶は、「日本人の手による、日本人の味覚のためのウイスキー」が商業的に成功した最初の証でした。