2008年、日本のウイスキー消費は1983年のピークから四半世紀縮み続け、最盛期の数分の一まで落ち込んでいました。「若者はウイスキーを飲まない」が業界の常識だったこの年、サントリーは社運を賭けた反攻に出ます。武器は新商品ではなく、飲み方でした——「角ハイボール」。ジョッキで、レモンで、こだわりの黄金比で。居酒屋にハイボールタワーを設置し、ビールの一杯目を置き換える戦略は、女優・小雪のCM「ウイスキーがお好きでしょ」とともに社会現象となりました。ウイスキーは「おじさんの水割り」から「若者の炭酸」へと再定義され、2009年、国内ウイスキー消費は26年ぶりに前年を上回ります。この復活は世界のウイスキー業界でも研究対象となり、「衰退市場は飲み方の再発明で蘇る」という教科書事例になりました。1950年代のトリスバー、2008年の角ハイ——日本のウイスキーは二度、炭酸の泡に救われたのです。