2020年8月、香港ボナムズのオークションで、日本のウイスキー史に残る槌音が響きました。サントリーが同年に100本限定で国内抽選販売(定価300万円)したばかりの「山崎55年」に、620万香港ドル——当時のレートで約8,500万円の値が付いたのです。日本のウイスキーとして史上最高額。1960年代までに蒸溜された原酒を含む、日本最古級の超長期熟成という中身の希少性に加え、この落札額は一つの時代を象徴していました。ジャパニーズウイスキーが投資対象・蒐集対象として世界の富の市場に組み込まれたという現実です。竹鶴と鳥井が模倣から始めた酒が、一世紀を経て一本数千万円で競られる——喜ばしい到達点と見るか、飲む文化からの乖離と見るかは、立場によって分かれます。確かなのは、この槌音が「日本のウイスキーの100年」に対する市場からの、極めて雄弁な採点だったということです。
山崎55年、8,500万円 — 一本の瓶が示した時代
2020年、香港のオークションで山崎55年が約8,500万円で落札されました。日本のウイスキーの現在地を示す数字です。