第二次世界大戦は、ウイスキーの熟成庫にも戦時体制を敷きました。英国では食糧優先の大麦統制により蒸溜所の多くが操業を停止し、スコッチは外貨獲得の輸出品として国家戦略物資の扱いを受けます。「ドルのためにウイスキーを」——チャーチルが増産継続を指示したと伝えられる文書は、この酒の経済的重みを物語ります。一方の日本では、ウイスキーは海軍の指定物資となりました。艦内の士官用酒保にウイスキーは欠かせず、山崎も余市も海軍監督工場の指定を受けて原料の配給を確保——皮肉にも軍需が、若い日本のウイスキー産業の存続を支えたのです。竹鶴政孝が「品質を落とさずに済んだのは海軍のおかげ」と回想した時代でした。戦火で欧州の蒸溜所が沈黙する間も、樽の中の時間だけは止まらずに流れ続けた——戦後の復興期に開かれた熟成樽には、戦争を挟んだ歳月がそのまま眠っていたのです。
戦時下のウイスキー — 海軍が守った樽
第二次大戦下、英国は大麦統制で蒸溜を止め、日本では海軍指定がウイスキーを守りました。戦争は熟成庫にも影を落とします。