ウイスキーの前半の工程は、実はビール造りとほぼ同じです(ホップを使わない点だけが違う)。その「醸造の兄弟」であるビールの樽でウイスキーを仕上げる——IPAカスクやスタウト樽のフィニッシュは、分かれた兄弟が樽を介して再会する、詩的なフィニッシュです。

01 スタウト・ポーター樽 — 黒ビールの深み

もう一つの方向が、黒ビールの樽です。スタウトやポーター(焙煎麦芽を使う濃色ビール)の樽は、ウイスキーにコーヒー、ダークチョコ、焙煎した麦の香ばしい甘みを与えます。IPA樽が「爽やかで明るい」方向なら、スタウト樽は「濃くほろ苦い」方向。ギネスのような黒ビールを思わせる深みが加わり、冬の夜向きの一本になります。ビール樽フィニッシュは、この明暗二方向で楽しめるのが面白いところです。

02 兄弟の再会という物語

ビール樽フィニッシュの本当の魅力は、物語性にあります。ウイスキーは発酵の途中まではビールと同じ道を歩み、蒸溜という分岐点で袂を分かった——その分かれた兄弟の樽で仕上げることは、いわば故郷への里帰りです。麦から生まれた二つの酒が、樽の中で再び出会う。クラフトビールとクラフトウイスキーが同時に盛り上がる現代だからこそ生まれた、時代を映すフィニッシュとも言えます。実際、ビール醸造所と蒸溜所が樽を交換し合うコラボも増えています。

03 楽しみ方

IPA樽フィニッシュは、意外にもハイボールが好相性です——ホップの香りが炭酸で弾け、クラフトビール的な爽快感が生まれます。スタウト樽はロックでじっくり、チョコレートやコーヒー系のデザートと。そして究極の楽しみ方は、そのウイスキーと、元になったビールを並べて飲むこと。兄弟の顔立ちの違いと似ているところを探す夜は、麦という一つの原料の可能性の広さを教えてくれます。