スペイサイドの東、アバディーンの後背地に広がる東ハイランドは、観光ルートから外れがちな「静かな産地」です。しかしこの一帯には、シェリー樽の総本山から伝統ピートの守り手まで、通好みの実力者が点在しています。

01 シェリーの重鎮 — グレンドロナックとその周辺

東ハイランドの顔は、シェリー樽教の総本山グレンドロナックです(専用記事あり)。この一帯は歴史的にシェリー樽熟成の濃厚なモルトを得意とし、アバディーン周辺の農業地帯の豊かな大麦と、内陸の寒暖差が骨太な酒質を支えてきました。近隣のグレンガーヴェン渓谷やディーサイド(王室のバルモラル城で知られる)には、ロイヤルロッホナガー——ヴィクトリア女王の時代から「ロイヤル」を冠する小さな名門——も座っています。

02 海沿いの異才たち

海岸線に目を移すと、個性派が並びます。港町の老舗グレンギリー(1797年創業——オールドミルダンの名でも知られた復活組)、蜂蜜のような酒質で知られるアバディーンシャーの小規模蒸溜所群、そして北上すればマッカラン所有会社の故郷でもあるこの地方の商業都市アバディーン——石油産業の街としての現代の顔と、花崗岩の旧市街が同居します。派手さはないが、どの家も芯がある——東ハイランドの魅力は、この「地に足のついた実力」に尽きます。

03 家での旅

東ハイランドの夜は、二本で組めます。グレンドロナック12年(シェリーの重心)とアードモア・レガシー(乾いた煙)——甘い闇と焚き火、内陸の二つの顔です。肴はスコットランド東岸の名物に倣ってスモークサーモンか、アバディーン・アンガス牛のローストビーフを少し。観光ガイドに載らない産地の一杯は、「自分だけが知っている」という密かな満足も注いでくれます。