エディンバラとグラスゴーを含むスコットランド南部、ローランド。人口では国の大半を抱えるこの地域は、ウイスキーの世界では長く「影の薄い産地」でした。20世紀末、稼働する蒸留所はわずか2〜3か所——しかし2020年代の今、ここはスコットランドで最も新蒸留所が生まれている熱い土地です。
01 「レディースモルト」と呼ばれた繊細
ローランドの伝統は3回蒸留による軽く滑らかな酒質です。草原、レモン、白い花——朝から飲めそうな清潔さは「朝食のモルト」「レディースモルト」と呼ばれました(後者は今日では時代がかった呼称ですが)。オーヘントッシャンが守る3回蒸留、グレンキンチーの首都近郊の穏やかさ——強さを競う時代に「軽さ」を磨き続けた美学は、食前酒文化やカクテル時代との相性で再評価されています。
02 衰退の理由と、復活の理由
衰退の主因は皮肉にも都市に近すぎたこと——地価と産業構造の変化で、蒸留所は次々と姿を消しました(1993年のローズバンク閉鎖はその象徴)。ところが2010年代、同じ「都市に近い」が復活の理由に転じます。観光客が来やすい、若い人材が集まる、クラフト消費の中心地に近い——キングスバーンズ、ダフトミル、リンドーズアビー、グラスゴー、ホリールード、そして復活したローズバンク。ローランドの蒸留所数はいまや二桁に乗り、「最も若い産地」として生まれ変わりました。
03 いま飲むべきローランド
古典ならオーヘントッシャン アメリカンオーク(3回蒸留の透明感)、新世代ならキングスバーンズ ドリーム・トゥ・ドラム(ゴルフの聖地の夢)、伝説を追うならローズバンクの新原酒の成長待ち、幻を狙うならダフトミル——新旧の振れ幅こそ、今のローランドの魅力です。「軽い」は「浅い」ではない。この産地の逆襲は、まだ序章です。