樽フィニッシュの世界に、比較的新しく登場した挑戦者がいます。テキーラとメスカル——メキシコのアガベ(竜舌蘭)を原料とする蒸留酒の樽です。ここ数年で急増したこのフィニッシュは、ウイスキーに従来なかった「青みと土と燻煙」の個性をもたらしています。

01 なぜ今、増えているのか

テキーラ・メスカル樽フィニッシュの急増には背景があります。世界的なテキーラ/メスカルブームで良質な中古樽の供給が増えたこと、そして飲み手が「新しい体験」を求めていること。デュワーズがメスカル樽フィニッシュを出す(専用記事で触れた実験)など、大手も参入しています。まだ「珍しい実験」の段階ですが、アガベの個性は強く、うまくはまれば忘れがたい一本になる——樽フィニッシュのフロンティアとして、今最も動きのある領域の一つです。

02 相性と難しさ

アガベの個性は強烈なため、相性の見極めが難しいフィニッシュでもあります。青みや土っぽさがウイスキーの果実味とぶつかることもあれば、スモーキーな原酒とメスカル樽の燻香が響き合って新次元の煙になることも。「当たれば大きいが、外すこともある」ハイリスク・ハイリターンな樽です。だからこそ、造り手の技量が試される領域——丁寧に設計されたテキーラ樽フィニッシュは、樽選びのセンスの証明になります。

03 試すときの心構え

テキーラ・メスカル樽フィニッシュに出会ったら、「いつものウイスキーの延長」ではなく「新しいカテゴリー」として臨むのがおすすめです。先入観を外し、青いハーブや土、燻煙といった見慣れない要素を探しながら飲む——好き嫌いは分かれますが、それも含めて刺激的な体験です。北のウイスキーと中米の蒸留酒が樽を介して握手する。グローバル化した現代の樽文化の、最前線の味と言えます。