今回はウイスキーの一生を旅します。出発点は大麦の粒、終点はあなたのグラス。途中の停車駅は5つだけです。この5駅を知っていると、この先「麦芽の香ばしさ」「発酵由来のフルーティーさ」「樽のバニラ香」といった味の言葉が、すべて具体的な風景として見えるようになります。

01 第1駅・製麦 — 麦を目覚めさせる

大麦はそのままでは糖分が足りません。水に浸けて発芽させると、粒の中のでんぷんを糖に変える準備が整います。これが「麦芽(モルト)」。発芽を止めるために乾燥させるとき、泥炭(ピート)の煙で燻すと、あのスモーキーな香りが麦に宿ります。煙たいウイスキーの正体は、実はこの最初の駅で決まっているのです。

02 第2駅・糖化と第3駅・発酵 — 麦のジュースからもろみへ

砕いた麦芽を温水と混ぜると、甘い麦のジュース(麦汁)ができます(糖化)。そこに酵母を加えると、糖がアルコールに変わり、度数8%ほどの「もろみ」に(発酵)。ここまでは、実はビールづくりとほぼ同じ道のりです。ウイスキーとビールは、いわば同じ母から生まれた兄弟なのです。

03 第4駅・蒸溜 — 銅の釜で濃縮する

もろみを銅の釜(ポットスチル)で加熱すると、水より先にアルコールが蒸気になります。これを冷やして集めると、度数70%前後の無色透明な原酒「ニューメイク」が誕生します。釜の形や大きさは蒸溜所ごとに違い、これが各蒸溜所の個性の源になります。銅の釜は雑味を取り除く「浄化装置」でもあります。