サントリーのウイスキーといえば山崎・白州・響——ですが、2010年代以降の棚で存在感を増したのは、実は「もう二つの顔」でした。単一グレーンの知多と、世界5産地ブレンドの碧Ao。この二本の設計を読むと、現代サントリーの戦略が見えてきます。
01 知多 — 「風香るハイボール」のグレーン
知多は、愛知県知多蒸溜所のグレーンウイスキーだけで造られるシングルグレーンです。トウモロコシ主体を連続式蒸溜で仕上げた原酒は、軽く、甘く、澄んだ性格。ワイン樽やスパニッシュオークなど複数の樽で後熟した原酒を組み合わせ、「風のように軽やか」という設計を実現しています。従来「ブレンドの裏方」だったグレーンを単独主役に立てたのは、日本の大手では画期的な試みでした——ハイボールにすると、モルトとはまったく違う「すっきりと甘い風」が吹きます。
02 碧Ao — 5大産地を一本に
碧Aoは、サントリーが世界に持つ5大産地の自社蒸溜所——アイラ(ボウモア等)、アイルランド(クーリー)、米国(ジムビーム)、カナダ(アルバータ)、日本——の原酒だけをブレンドした「ワールドブレンデッド」です。バーボンの甘さを土台に、アイリッシュの滑らかさ、アイラの微かな煙、日本の調和が重なる設計で、一杯の中に世界地図が入っている教材的な面白さがあります。2021年の表示基準以降、「ジャパニーズを名乗らず、多国籍を正直に名乗る」誠実なカテゴリーの旗艦でもあります。
03 使いどころ
知多は食中ハイボールの決定版格——繊細な和食にも寄り添う軽さは、モルトのハイボール(白州)と並ぶもう一つの答えです。碧Aoはロックで、産地の層を探しながらゆっくりと。入門コースの5大産地学習(第14回)の「一本で復習できる教材」としても優秀です。山崎・響だけがサントリーではない——この二本を知ると、同社の棚の見え方が立体になります。